論 考

戦争を煽るな

 テレビを中心に、あたかも戦争を煽るような報道が多い。戦争を体験しないものほど戦争を美化する。

 第一次世界大戦から、軍事技術の発達で、戦闘員と非戦闘員の区別は事実上ナンセンスとなった。武器を使う兵士同士の戦闘も、なんら美化できる要素はない。まして、非戦闘員が殺傷されるのは、悲惨以外のなにごとでもない。

 「こどもを殺すな」という声は、至極当然に聞こえるが、正しくは「人を殺すな」であり、「戦争を止めろ」というべきだ。

 核兵器の登場によって、牧歌的! 戦闘は過去の物語になり、核兵器を使う戦争を否定する世論が大きくなった。しかし、大国間の恐怖の均衡が続いてきた。

 それでも、軍事力に莫大な資金をつぎ込むことに対する批判が一定の重みをもっていた。いまはどうか。国防の名のもとに、軍事費青天井的な気風が強まっている。

 バイデン氏の米国は、2023会計年度(22.10~23.9)の国防予算を8,133億ドル(101兆円)にする。こんなものにいかに巨額をつぎ込んでも、平和創造には貢献しない。

 それぞれの名目は、集団安全保障体制を「盾」だというが、実は、それ自体が疑心暗鬼を深める。安全ではなく、危険を深化させる。

 それが、今回のロシアのウクライナ侵攻の大きな理由であることは事実だ。問題の本質に迫る努力を放置しておこなう安全保障論議とは、本質において、戦争を求めるものでしかない。