論 考

近隣外交の重要性に目を向けよ

 1969年9月松江で、佐藤栄作(1901~1975)は、政治目標として、自主防衛、アジアの安定の主役を果たすと語った。これは、いわゆる自民党、保守本流の主張であった。

 自主防衛は日米安保体制依存が進み、アジアの安定の主役については、まだ中国との国交回復を実現できていなかった。72年、田中角栄(1918~1993)によって日中国交回復を実現したが、当時の友好ムードは消し飛んでいる。

 先日、日韓外相会談がひさびさ実現したが、こちらも友好関係には程遠い。

 アジアの安定の主役というこころざしを、自民党において忘れたのかどうかは知らないが、日韓が地域の安定を唱えても、当事者がきちんと向き合わないような始末では話にならない。

 敗戦までの経験を忘れないのであれば、近隣国との友好的外交をめざすのは必然である。いつまでも拱手傍観しているべきではない。

 佐藤・田中の時代は、日本はアジアではダントツの位置にあった。いまは歴然と違う。近隣外交の重要性は、以前よりもはるかに増している。状況が理解できていないのだろうか。