論 考

「制御不能」に違和感

 東京都のモニタリング会議で、「現状(「自粛」)では、コロナウイルス感染拡大に対して制御不能であるから、自分の身は自分で守ることでやってくれ」という趣旨の発言があった。

 自粛の期待した効果が出ず、東京では最近の7日間平均3933.9人である。東京の10万人当りの数字は、五輪開会の7月23日が69.69人、閉会の8月8日には203.00人、9日207.94人、12日は199.93人である。

 10万人当り数字が全国(8/12)では、10人超は45都道府県、25人超は34都道府県、35人超は26都道府県で、全国的に感染拡大している。

 もともと、自粛自体が、自分の身は自分で守れということであり、日常性における不便を我慢してもらうことによって、医療体制崩壊を防ぎ、いざという場合に対する対策を講ずるのが趣旨であって、自粛大号令をかけることは行政機関の対策とはいえない。自粛するのは1人ひとりである。

 五輪を開催することが、人々の心理状態に大きな影響を与え、自粛効果を落とすいう危惧は事前から大声疾呼されていた。それを無視したのは政府や都である。政府・都は、その結果が想定内だから、五輪を開催したはずだ。

 当てが外れたのか、想定内なのかはともかくとして、目下、全国的に感染拡大したところで、「制御不能」というのは、行政の責任転嫁である。まあ、専門家としては警鐘乱打していたのだから、制御不能をいうのだろうが、怒りの矛先が都民・国民に向けられたのではいかん。

 要は、この間(というか、昨年から一貫して)保健・医療体制強化を徹底的におこなったのかどうか。わたしは、自粛効果は出ているし、こんなものだと考える。それを与件として、対策を講ずるのが行政の仕事である。

 菅氏だけでなく、ワクチン頼みである。ワクチンの1回接種は39.5%、2回接種は29.9%である。快調なペースとはいえない。また、感染経路にしても、一般論で対人接触を避けよというだけで、どのようにして感染したのか、データを積極的に公開してはいない。わかっているだろう、ということではなく、当局関係者がもっているデータを公開して、人々に対する説得力を高めるべきである。

 自分の身を意図的に危険にさらす人は少ない。行政・関係者がとるべき対策は、早期発見・早期隔離・早期治療である。感染症対策の原則に立ち返った見識を具体化してもらいたい。