論 考

崖っぷちの自民党

 まるでポンチ絵に描いたようなドタバタが続いている。

 昨日の五輪・パラ5者会議で、バッハ氏は「緊急事態宣言とはどういうものか?」と質問した。なにをかいわんや。IOCは、無観客でもなんでも開催すればよろしい。しかし、果たして何がなんでも実施することがすべてに優先するというのは、論理的には成り立たない。

 無観客競技を、国内スポンサーは想定外として不満を表明した。

 政治というものは、かくありたい・あるべしという目的が必要である。これは、誰もが理解する。同時に、かくありたい・あるべしということが、直ちに実践できるわけでないことも、誰もが知っている。

 抽象化すれば、理想と現実の調和こそが政治の妙である。

 自民党が長く政権を掌握してきたが、その1つの特徴は、現実を重視して、理想だからといって軽々に発言・行動しないことであった。だから、いろいろ不都合を知りつつも、人々は自民党に投票した。

 しかし、安倍内閣の8年間は、すべからく、理想を前面に押し出して、人々に期待感を抱かせて突き進むスタイルであった。これは、事態が壁に突き当たるまでは有効であるが、いよいよ、土壇場にくると、現実的処理をしなければならない。まさに、その典型的事態がコロナ下の五輪・パラである。

 リーダーはいかにあるべきか。政党はいかにあるべきか――自民党の政治モデルを安倍・菅コンビが破壊したのでもある。

 本来の自民党(意識しているとしての話だが)であれば、もはや、五輪・パラ開催をテコとして、次の総選挙に臨むことが、いかに危険であるか、察しているのではあるまいか。

 この核心的問題を無視して惰性的に進むのであれば、自民党は再び瓦解の道へ転落するにちがいない。老婆心ながら一文を草した次第である。