論 考

武力での優位は解決を導かない

 17日のイスラエル・パレスチナ衝突問題に関する安保理事会は、共同声明を採択できなかった。10日から3度目の理事会だが、アメリカが動かない。さらに18日に4度目の理事会を開く予定だ。

 17日に向けて公表された共同声明草案の要旨は、① 事態の鎮静化、② 暴力停止、③ 民間人に対する国連人道法の尊重――の3点で、基本姿勢は、イスラエルとパレスチナの2国家共存である。

 イスラエルの攻撃目標はハマスの力を削ぐことだ。ハマスが作ったメトロといわれる地下トンネル(15kmくらいある)や、ガザ地区を実効支配しているハマス幹部の自宅を爆撃している。

 ガザ地区は燃料不足で、人々の生活が追い詰められている。国連が燃料を届けるべく動いたが、イスラエルが承諾せず宙ぶらりんだ。

 17日、バイデン氏がネタニヤフ氏と電話会談して、バイデン氏は「停戦支持」を伝えたというが、ネタニヤフ氏の反応は公表されていない。ネタニヤフ氏が納得しないのであれば、バイデン氏は停戦支持なのだから、それに向けて行動を起こすべきである。つまり、安保理事会の共同声明に加わるのが筋である。

 しかし、共同声明に賛成しないのであれば、イスラエルに時間的余裕を与えて、ハマスの力を削ぐことに協力するのと同じだ。ハマスのロケット弾攻撃と、イスラエルの爆撃の写真を見ると、極端にいえば花火とロケット弾の違いみたいだ。

 バイデン氏がすっきり、2国家共存の仲介役に戻るか。米国内政治事情が影響している。イスラエルも、パレスチナも、国内政治事情が影響している。理性的に考えれば、1990年代のオスロ平和交渉の精神と方向性しか、問題解決の段取りはない。トランプ氏が仲介役を蹴とばしたから、バイデン氏が仲介役に戻るためには国連常任理事会決議が大事な分岐点になる。

 イスラエルは力の限界に気づくべきだ。オスロ以降、力の差が歴然としているのに勝利を握られなかったではないか。