論 考

アメリカは民主主義の宗家にあらず

 12日、バイデン氏が副大統領候補のカマラ氏とコンビで初スピーチをした。バイデン氏のキャッチコピーは3B「Build Back Better」で、アメリカを立て直そうという。当日の支持率は、バイデン氏49.3%、トランプ氏が41.8%である。

 また上院議員選挙の見通しも、民主党が5~7議席増やす可能性が強い。そうなれば上下院を民主党が制することになる。共和党は、トランプ氏が大統領になってから、さしたる存在感を示せず、ひいきの引き倒しになっている。大統領が代わり、議会地図も変われば、まあ、3Bに向かう可能性がある。

 アメリカは、冷戦時代から「自由・人間の尊厳・法の支配」を掲げているが、現実の内容はかなり怪しい。中南米やアフリカ南部では、専制君主や独裁者を支援してきた。その理屈はソ連という悪魔の進出を食い止めるというにあった。

 何よりもの問題は、アメリカはつねに「アメリカ第一主義」であった。この傾向は、いまも、そしてこれからも変わらないだろう。軍事力・経済力が他に圧倒していれば穏健に、そうでないからトランプ的アメリカが登場した。

 「アメリカ第一主義」が正しくないことをアメリカ自身に理解させるためには、世界各国が二国間関係、あるいは国際的舞台を通じて、じわじわと教育! しなければならない。まちがっても、アメリカを「世界の警察官」などと過信してはいけない。まして、世界の民主主義の宗家などと勘違いしてはならない。

 極端な話、世界中の国々で、人々が民主主義の国民たることを満喫するような事態になれば、超大国の顔色をうかがって怪しい手練手管の外交をしなくてすむわけだ。夢かもしれないが、この夢を失うならば、世界はいつまでも物騒な事態から抜け出せない。

 「人間の尊厳」は、1人ひとりの心がけに依拠している。