論 考

現代資本主義の弱み

 まさしく皮肉を痛感する。というのは、資本主義は自由放任と相性がよろしい。さらには消費活動を大声疾呼してきた。なにしろ、売れなければ成り立たないのだから、資本主義はpressure to sellで、宣伝広告も含めて、極論すれば人々の欲望を喚起することに余念がない。

 これが、自粛なるキーワードが登場するや、欲望を抑えろという網をかけた。天井知らずの長時間労働も一転した。問題の核心は、8割おじさんに言われるまでもなく、対人接触を減らすことである。外出しても密接な関係を作らず、しかるべき間隔を空けていればよろしいのに、いつの間にか外出禁止みたいな気分になっているから、誰もが窮屈を感じる。

 極論すれば従来と正反対の方向へ価値観がひっくり返ったのだから、フラストレーションが膨張する。

 しかも、世界の資本主義はモノの時代から金融の時代へとっくに移っている。世界の企業の債務はGDPの3倍になった。名目経済が順調なときには、無理をしても借金できているが、不況、それも事業活動が自由にできなくて、減収になると利子支払いの負担がミリミリ効いてくる。企業規模を問わず、金融負担が経営を圧迫する。政府・自治体が少々の手を打ってもとても支えられない事態である。

 このような事態だから、世界各国で、なんとか経済活動を再開させたいという気風が高まる。経済に精通した政治家は多くはない。平時には政財界が心地よくもたれ合ってきたが、両者間に見えざる摩擦葛藤が発生している。軽々しく緊急事態を緩和すれば、感染爆発して傷口をさらに拡大する危惧がある。

 儲けるのが資本主義の核心だけれども、ここは、発想を変えて、経済活動は人々の生活のためにあるのだから、経済界は挙げて、いま、なにをなすべきかを考えて行動するべきである。財界が「雇用を守る」と宣言するだけでも、世間はたちまち明るくなる。