論 考

当局はきちんと情報を提供せよ

 神経戦が長引きそうで、気分爽快とはいかない。今朝の東京新聞は、クルーズ船の乗務員に電話取材した内容を報じているが、やはりと言うべきか、2月5日からの船内待機態勢はかなり粗雑だったようだ。乗員は陽性の乗客とも頻繁に接触していた。環境感染学会の専門家会議が開催されたのは10日で、専門家は「下船が望ましい」と提言したが、反映されなかった。

 もう一つ驚いたのは、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の報告によると、船内待機中の1か月間に「死にたい」とか、「船を飛び降りたい」というような乗客の発言が91件もあったという。

 連日、感染者数を見ているが、まだ落ち着いていない。世界的に感染増加の推移は非常に厳しい。

 BBCは7日、東京五輪の開催について観測記事を掲載した。大会開催についての権限は全面的にIOCにある。無観客で実施、1年延長、場所移転、全面中止など、場外で騒がしくなってきた。選手や熱烈なファンの期待がいかに大きかろうと、COVID-19の見通しが立たなければ動きが取れない。

 フィナンシャルタイムズによると、ワクチンの開発は世界的に猛スピードで走っている。米バイオベンチャーのモダーナは、中国学者が新型コロナウイルスのゲノムを1月10日に公表してから42日間でワクチンを作った。いまは、米国立衛生研究所(NIH)で検査に入っているそうだ。ただし、ワクチンが開発できて、あまねく使用可能になるには1年から1.5年はかかるという。次は量産体制が問題になる。

 いずれにせよ、あたふたしても仕方がない。幸い目下は、まあまあ冷静だと思うが、きちんとした体制作りや情報が提供されていない現状を見ていると、心配のタネは尽きない。当局が現状と観測の内容を整理して公表するべきである。情報がオープンに提供されていないから不安に拍車をかける。