-労働組合が倒産する立ち読み

著者・奥井礼喜
総合労働研究所
本体1,553円
B6版/本文225頁
1981年初版
1995年14刷更新中
<目次>
第一章 存在理由がなければ消えるしかない
第二章 労働組合をダメにする10の体質
第三章 労働組合運動のマーケティング戦略
第四章 それなりに中流意識に浸るサラリーマン
第五章 新商品開発のできない組合は倒産する
第六章 人的資源を長期再生戦略に
どきゅめんと ゲームも満足にできずに本番が成功するか
 ――研修活動の実例とプログラム――

はじめに
このところ、労働組合の評判が余りよくない。労働組合「空気論」が定着してし まっているばかりか、「無用論」までもが顔を出す時世である。
それを典型的に反映しているのが「春闘」である。三十年近くもの間、常に組合 を象徴し続けてきた春闘の人気が低迷しているのである。大衆参加を声高に呼びか けても、組合員はなぜか燃えない。とすれば、春闘という主力商品に売上の全てを 期待してきた労働組合は、春闘の低迷と共に影が薄くなってきたのだろうか。
春闘の低迷は、要求と妥結の差というような次元の問題ではあるまい。労働組合 の存在理由、戦略・戦術にもかかわるような問題ではないか、と思うのである。素 材理由がなければ消えるしかない、というのは真理である。この本の狙いは、労働 組合の存在理由を探り、そのサバイバルの道を探ろうとするものである。
また、賃金闘争という単一商品しか市場に売り出せなかったところに、今日の労 同組合の苦悩がある。新商品を出せない企業が生き残れないように、労働組合も新 商品を出さなければ生き残れない。新商品開発のできる組織の状況を「活性化」し た組織と表現すると共に、それを達成する手段として「教育研修活動」を提起して いる。教育研修は個人と組織の両方を変革していこうとする。本格するエネルギー を再生させることこそが、労働組合のサバイバルだと考えるのである。
私が三菱電機に入って十八年を経た。純粋に企業活動に従事したのは丸三年。他 は全て三菱電機労働組合の執行部の一人として考え、行動してきたわけである。い わば私は、労働組合組織によって育成・培養された人間である。その労働組合の低 落傾向を見過ごすわけにはいかない、というのが本書の執筆の動機である。この本 の素材は同労組の運動ではあるが、労働組合運動全体を考えたものであり、私自身 の個人的見解の部分が多いことを、あらかじめお断りしておく。
労働組合運動活性化の参考になれば幸いである。
一九八一年五月 奥井禮喜