論 考

政権維持のみが目的の政権

 部族同士の紛争が絶えなかった蒙古の遊牧民が、ジンギスカン(1162~1227)によって統一されたのが1206年であった。騎馬10万騎によって中国から欧州にまで領土を拡大する。続くフビライ(1215~1294)が1271年に元を建てた。

 仲間割れが当然の習わしである蒙古民族がジンギスカンに一本化されたのはいまだ歴史の不思議であるが、仲間割れエネルギーが一本に結集されるならば極めて大きな力を発揮することを証明した。

 元の蒙古は政策が得意ではなかった。蒙古人至上主義を構え、他を極端に差別した不満に加え、重税・インフレ、やがて相続争いの内乱が発生して仲間割れを起こす。1348年の方国珍の反乱に続いて、1353年には朱元璋(1328~1398)が挙兵し、元は1368年には朱元璋の明にとって代わられる。

 安倍長期政権という文字が目立つが、それにしては政治的進歩がなく、この数年は常にスキャンダルと乱暴な議会運営の印象が強い。目立つのは「他に人がいない」という言葉に代表されるように、頭角を現す後継者がいない。政権が長くなったのは他を潰す戦略が成功したようである。それもそのはず、議会運営は全面的に官僚依存で、野党はもちろん、与党内部においてすら、議員諸氏の出番がない。

 官僚依存というよりも、議員が官僚化したような気配がある。その結果、政治家は選挙戦でのパフォーマンスばかりに熱が入る。つねに、わさわさ賑わっているが、腰を落ち着けた議論がない。長期政権というが中身がない。

 本日の読売社説は「惰性を戒め政策で結果を示せ」と主張した。惰性、すなわち政権維持が目的化した長期政権だということを、与党新聞も認めているみたいである。