論 考

戦争開始のケーススタディ

 12月20日に韓国海軍駆逐艦が、海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射したとする日本側に対して、韓国国防省は否定している。目下、水掛け論の様相だ。

 韓国側は、遭難した北朝鮮漁船を捜索するために水上目標用レーダーMW-08を使っていたのであって、日本側が主張する火器管制レーダー(STIR-180)の稼働はしていない。また、駆逐艦上空にP1哨戒機が1,000フィート上空まで下降してきたので脅威を感じて電子工学的追跡装備EOTSを作動させたと主張する。

 日本側は駆逐艦に呼びかけたと主張し、韓国側は通信強度が微弱で内容がよくわからず応答しなかったと主張する。

 両国政府の政治的思惑は横へ置いて、このアクシデント! を考えてみる。

 コミュニケーションが成立しない状態で、それぞれの「戦闘装置」が、自らの「任務に忠実」であれば、かかるアクシデントが発生してもなんら不思議ではない。

 ところが日本側は、政治家もメディアも最近の日韓関係がらみでアクシデントに物語をつけるから、話が増幅拡大する。相手の非を打つことに熱中すれば話は険悪な方向へ進むのが当然である。

 いま、こんなことで戦争が始まることはないが、戦争というものは、このような自国内扇動によって始まるのだという事例である。