論 考

民主主義の劣化、日米事情

 バイデン氏が大統領選挙出馬表明、「民主主義を守る瞬間」だというのが売りだ。トランプ氏が相手だということを想定して、民主主義対権威主義の構図を演出する。まあ、予定通りである。

 トランプ氏との対抗軸を明確にするためには、必然の流れであるが、バイデン氏の民主主義の大安売りも気がかりである。

 対立軸を立てることは可能だが、国民の民主主義が発展することにはならない。民主共和の罵り合いに行きつくような予感だ。

 たしかに、トランプ氏が民主主義を破壊する言動・行動に余念がないことは事実だが、にもかかわらずそれを支持する人々が減らない。

 民主主義は1人ひとりが自分自身を育てねば成長しない。対立軸を構築して、勝利したとしても、民主主義の勝利とはならない。

 民主主義が必要とするのは理性的人間である。このままでは、ますます米国的民主主義が劣化するだろう。

 もちろん、これ、日本的民主主義が優れているから批判するのではない。日本的民主主義の中身は、米国流の対立がないだけで、劣化というより、民主主義以前の雰囲気にもどっているような気がしてならない。

 いわゆるムラ意識・お仲間関係は強いが、各人の民主主義意識は棚上げされている。戦前の日本的ファシズム(全体主義)の再現を懸念する。