論 考

びっくり箱のアメリカ

 トランプ氏が、赤い大波(共和党のシンボルカラー)を呼びかけて、中間選挙の事前予想は共和党有利の予測だ。

 共和党が勝利すれば、今回は選挙結果に文句が出ないかもしれないが、逆に、だからバイデン氏当選はインチキだったという声が増幅される危惧がある。

 トランプ氏の不正選挙というフェイクが共和党支持者にはいまだ信じられているのは、なんともはや嫌らしい。

 選挙を不正と見れば、民主主義は根底で崩れている。

 マルクス(1818~1883)は、ヘーゲルの疎外論を発展させて、国家が社会の上に立って、社会をますます疎外してゆく権力であるならば、国家権力装置を廃絶することなしには、被抑圧階級の解放は不可能だと主張した。

 アメリカはマルクスの主張の軸である被抑圧階級問題とは無関係に、社会内部が文化戦争=価値観の衝突を生み出している。

 社会から生まれながら、社会の上に立ち、社会から自らをますます疎外してゆく権力が国家であり、その国家が巨大な分裂と対立によって揺さぶられる。

 わが国のように、なんだかんだと論議しても選挙が終われば一件落着とはいかないのが目下のアメリカだ。

 しかも、アメリカ社会は人々が自由に銃を手にしている。アメリカという国は砲艦外交だが、社会の人々にも力による社会の意識が浸透しているようである。見えざる力がなにを引き起こすか。

 SAVE AMERICAとラベルの貼られた演壇でアジテーションに精出すトランプ氏を見ると、民主主義のチャンピオンと目された時代は、まったく過去に遠ざかったみたいだ。