論 考

大混乱の2023年度概算要求

 2023年度概算要求は110兆円、国債依存などまるで眼中にない能天気ぶりで、重要施策は事項要求(項目だけで金額不明示)という粗雑さだ。

 防衛費は5兆5947億円、もちろん過去最高である。ウクライナ戦争、台湾問題をテコとして、この際、獲得できるものは獲得しておこうという便乗精神が露骨に出ている。

 岸田氏のポリシーのなさを指摘してきたが、まさしく岸田にしてこの予算編成ありだ。ポピュリズム政治を突き抜けて、なんでもありの大混乱だと考えるしかない。目下のわが国は政治の「束ね」が不在である。

 そもそも、防衛とは武力・軍備だけ論じて間に合うものではない。第一に念頭に置くべきは、国力である。北朝鮮ではあるまいし、経済力・国民生活を無視して、軍備拡大に走るのは理性を欠く。

 第二に軍備は防衛のなかでも直接戦闘の手段であり、その前に、わが国防衛のコンセプトを大々的に論議するのが当然である。

 第三に軍拡が安全につながるというのは浅薄な考えである。軍拡自体が戦争の危機を手繰り寄せる。いわば、大金を投じて危険を買う愚である。