論 考

ゴルビー、ご苦労さま

 ゴルバチョフ氏が亡くなった。暗殺されかけたこともあるが、寿命をまっとうしたといえる。波乱万丈の政治家生涯だった。

 1985年書記長の座を射止めたときの最大のバックボーン、グロムイコ外相・第一副首相(当時)は、ゴルバチョフを評した演説で、「諸君、彼の笑顔は素晴らしいが、鉄の歯をもっている」と語った。

 あまりにも有名な「ペレストロイカ」(立て直し)と、それを推進するための「グラスノスチ」(情報公開)は、レーニンからスターリンへと続いた鉄の組織規律に正面から挑戦したものだ。

 ゴルバチョフの政治家生涯の敵は、自分が頂点に立ったソ連の官僚組織である。労働者が解放されるはずのロシア革命がスターリンによって、専制独裁政治に変えられ、その後のフルシチョフと、ゴルバチョフの闘いは、巨視的には民主主義への歩みであった。

 民主主義への歩みは、人々の精神的革命を必要とする。加えて、政治的には鉄壁の官僚機構が立ちはだかる。

 まあ、こういう政治的戦いに挑戦した人が国葬にふさわしい。