論 考

頭を冷やして考えよう

 ペロシ氏の訪台について米国内でも軽率・無謀と批判する向きがあるが、引き続いて上院議員5人が訪台した。台湾の自由を守るために同志的連帯の気持ちを伝えるといえば形はつくが、軽挙妄動の上塗りである。アドベンチャー・ツーリズム気分じゃないか。

 台湾でも冷静な向きは、有難迷惑だと感じている。

 一方、中国は温めてきた武力行使の演習をおこなう理由ができたと喜んでいる見解がある。

 政治家連中の危ないところは、結局世論動向を眺めて方針決定する。まさに大人の火遊び火事の元である。世界は文明開化だが、政治家のオツムは未開人とさして変わらない。これが歴史の教えである。

 米国の狙いの核心は、中国の力を削ぐことである。その前段として、可能な限りの挑発行動をとる。挑発に乗った中国が、その行動を世論に批判されるならば儲けものという発想だ。

 米国政治家が本心から、台湾の人々を守ろうとするなら、彼らが窮地に追い込まれるような意図的なちょっかいは出さない。

 いざことが起こったとき、米軍が押っ取り刀で馳せ参ずるとは考えられない。ゼレンスキー氏は、米国・NATOが直接介入すると期待したに違いない。現実は見ての通りである。

 プーチンに対する世論の批判が高まっても、結局、もっとも悲惨な目に遭うのはウクライナの人々である。一方でウクライナを英雄として持ち上げるが、本当に苦しみから救おうと考えて行動しない。

 台湾のケースも同じことになると考えるのが妥当だ。米国の星条旗精神は、アメリカ・ファーストである。これを忘れて、米国産軍複合体国家の商人=政治家の美辞麗句にのほほんとしていると、えらい目をみる。

 挑発しておいて、相手が行動を起こせば、今度は大所高所論で御託を並べる。これを高みの見物という。

 暑さに負けず、オツムをクールにして情勢を眺めたい。