論 考

所詮、総裁選である

 自民党総裁選公示を前にして、立憲民主党も政権構想を出しているが、どうも執行部レベルの内容みたいだ。党内論議がおこなわれているのだろうか。

 メディアが自民党総裁選に大きなスペースを割くので、野党の影が薄く、対抗せねばならない焦りはわかるが、せっかく政権構想を打ち出すのであれば、大々的に党内論議の場を設けてはどうか。それこそが政治活動というものだ。

 総裁選候補にしても、各人の主張を掲げているだけで、自民党の政権構想とは言えない。所詮、1人の頭脳とセンスである。日本の政治は、頭を交換すればよいというほど単純なものではない。

 かりに政権交代が実現しても、いままでの政治を全然無視して新しい政治ができないのが現実だ。

 自民党は2%インフレをめざして「安倍+菅内」政権で9年間やってきたが、まったく達成できない。一方、日銀の金融緩和で、金融市場は資金洪水である。財政再建路線を打ち出したとしても、拙速で進めれば金融市場が大混乱する。政権交代しても、財政再建路線が形になるのは相当時間がかかる。

 朝日は本日の社説で、「野党共闘 国民に確かな選択肢を」と主張した。さりとて、箇条書きにした内容で、実際の政策推進が見えるものではない。

 選挙で議員獲得数が多数派となり、政権を担ったとしても、時々刻々展開される政策の全てをお任せするのではない。

 昔から、政権公約は選挙のときだけだと批判されてきたが、ある党が打ち出した政権公約は、そのままでなく、議会で十分に審議して、大きな合意を作り出すことが大事だ。

 とくに、今回の総選挙は、「安倍+菅」政権9年間の、汚職体質・議会無視の政治を総括して、議会政治を確実に再建することが問われる。これは総裁選挙では解決しない。社説には、もっと、問題の本質を押さえた論理展開をしてもらいたい。