論 考

意思決定がもたらす違和感

 19日から、イギリスの全イングランドで、対コロナ規制が全面解除された。ワクチン接種2回目が68%になったそうだが、このところ感染拡大傾向で、1日5万人が感染している。

 スーパーマーケット、鉄道、パブなどで働く人が数十万人自主隔離している。全面解除に熱意を燃やすジョンソン首相自身も、保健相が感染して、自主隔離に入った。感染症専門家は全面解除に反対している。違和感がある。

 五輪開会式直前に、オープニングの音楽を担当したアーチストがイジメ問題で辞任、事態推移を読み間違えた組織委員会に、またまた批判が続出。バッハ氏のノー天気な発言も繰り返し批判の遡上に載る。

 組織委員会のなかでは、呪われた五輪という声が出ているらしい。上の指示で働いている人たちのやるせない気持ちは分るが、違和感がある。なにしろ、五輪別格扱いでゴリ押しばかりしてきた。外部の目には自業自得である。

 ものごとの決断をするためには、状況という変数のなかの何かを固定せねばならない。意思決定するのは人間である。どんな行動を選択しても完璧な「是」はない。むしろ、「非」のほうが目立つ。

 ゲーテ(1749~1832)は、「行動するものは良心を持たない」と指摘したが、昨今の「非」なる違和感に共通するのは、きわめて常識的な批判に対して、意思決定者が聞く耳を持たないことに起因する。