論 考

だらだらゲームはつまらない

 E・H・カー(1892~1982)は、「政治における理論と現実の対立は、知識人と官僚の対立として現れる」と指摘した。知識人が先見的にものを考えようとするのに対して、官僚は経験的にものを考えるという。

 夫婦別姓問題に対する最高裁判所判決にも、裁判官の官僚(的思考)らしい判断が見て取れる。加えて、わが国の最高裁は政治的テーマを避けようとする習わしが強い。夫婦別姓に反対するのは、保守にとって重要な砦だからで、勝れて政治的テーマというわけだ。

 しかし、人間社会がすべて政治であることを考えれば、最高裁は何ごとに対しても独立した司法としての見識を表明するべきである。行政官僚と同様の思考に支配されるのは、面白くないし、よろしくない。

 司法と議会をサッカーにたとえれば、パスばかりしてだらだら退屈なゲーム運びをしているようなものだ。