論 考

アルツハイマー病の薬

 米国バイオジェンとエーザイが共同開発した、アルツハイマー病の薬、「アデュヘルム」Aduhelm(一般名 アデュカヌマプ)が、米食品医薬局FDAの「迅速承認」で、販売許可された。ただし、承認後研究が義務付けられている。FDAの諮問員会は治療の効果不十分としているので、見切り発車であるが、当然ながら世間の期待は大きい。

 世界ではアルツハイマー病は3千万人から5千万人、日本では65歳以上で1~3%だから、36万~108万人というところだ。

 アデュヘルムは、脳内組織に付着するアミロイドβを減少させる仕掛けらしい(アミロイドが付着して発生する疾患=類澱粉症を防ぐ)。医学会の評価は、「わずかな効果しかない」「重大な誤りだ、研究を10年妨げる」「アミロイドβの除去が本当に有効かわからない」という厳しいものがある。一方、歓迎する見解も「とりあえず使ってみる」から、「非常に重大な節目だ」というような内容で、期待半分、へっぴり腰という感じを否定できない。

 「迅速承認」というのは、有意な利益をもたらす可能性があるが、不確実な部分も残る医薬品承認制度なので、まあ、そんなところだろう。

 バイオジェンは年間売上130億ドルだが、承認発表後、株式時価総額が430億ドルだったものが180億ドル増えた。

 米国ではアルツハイマー症が150万人で、薬価が年間投与分56,000ドルに設定されたので、1/4が使ったとして210億ドルになる。治療効果はともかくも薬販売の効果のほうはかなりのものである。