論 考

軍拡批判には軍縮こそ

アイゼンハワー(1890~1969)が、1961年1月20日の大統領職離任演説で、予定スピーチから離れて、軍産複合体の危険性を指摘したのは有名なエピソードとして残る。

 15年に陸軍士官学校を卒業後して、少佐になったのは20年。当初から管理能力が優れていることが周囲に認められていた。しかし、中佐になったのは36年で昇進が遅かった。大将になったのが45年、同年元帥。中佐から元帥に駆け上った期間はわずか5年3か月であった。

 第二次世界大戦における在欧連合国最高司令官としての確かな指揮が内外に高い評価をうけた。大統領就任は53年、その離任の際、前述の軍産複合体批判をおこなった。

 本日の朝日新聞に、モンタナ州グレートフォールズ市にあるICBM(大陸間弾道弾)基地を取材した記事が掲載された。ICBMは450か所配置されており、うちロケット400基に核弾頭が搭載されている。

 州選出の連邦議会議員8人が超党派でICBM連合を組織し、ICBMを減らさず改良推進を継続するために(予算獲得)活動しているという。背後には、関連企業の強力な働きかけがある。議員には2007~18年に130万ドルの献金が転がり込んでいる。

 原発もそうだが、ICBMシステムが膨大な利権システムを形成しているわけだ。これだから、大統領が容易に核軍縮に着手できない。防衛というよりも儲け話が柱になっている。

 一方で盛んに中国の軍拡の危険性を喧伝しているが、世界の軍事費1兆9810億ドル(213兆円)のうち、米国が7780億ドルで世界の39%、中国が2520億ドルで世界の13%である。ついでながら日本は491億ドルだ。(ストックホルム国際平和研究所4/26)

 中国の軍拡がよろしくないというのは正しい。もちろん、米国のもだ。他国の軍拡批判が正当性を獲得するのは、軍縮をもってするのが本筋だ。