論 考

自民惨敗ではあるが

 参議院広島選挙区再選挙、長野選挙区・衆議院議員北海道2区補欠選挙、いずれも立憲を中心とする野党が勝利した。北海道では、自民党は候補者を立てられなかった。広島・北海道の争点は政治とカネという背景があり、社会的常識としては至極当たり前の結果である。

 しかし、社会的常識に相当する市民と、自民党支持の市民とは常識が異なる。政治とカネでしばしば自民党が世間の大きな批判を食らいつつも、コテンパンに敗北しないのは、自民党支持市民がつねに基盤の強さを維持しているからだ。

 今回も3つの選挙で自民党惨敗が事実であるが、菅政権に逆風だとしても、政権中枢が考えているのは、支持基盤が固いから、次の総選挙はなんとか乗り切られるという自信であろう。

 自民党内部で、いわゆる菅おろしが起きない。代わりの玉がいないという理屈であるが、玉がいないのは自民党内部の話で、与党対野党という関係には直接の関係がない。自民包囲網は未熟である。

 わたしは、野党が圧倒的大差をつけられなかったことに、大きな危惧を抱く。自民党の金権汚職体質を知らない市民はいない。大方の市民自身が「金権汚職体質馴れ」しているのではあるまいか。

 野党も、野党支持者にとっても、この3選挙が勢いをつけたなどと軽く考えないほうがよろしい。政治的慣性というものは、おそるべき力を持っている。