論 考

ゆるキャラの中身

 文章は形容詞から腐るというのは鉄則として、弁えておかないと、いよいよ本番のとき言葉の説得力がない事態を招く。

 重大な決意、非常時、瀬戸際、分岐点などなど、コロナウイルス感染拡大をめぐって、無い知恵を絞った修飾語が乱発された。

 本日の社説、朝日「まん延防止措置 『第四波』への対策急げ」、読売「まん延防止措置 『第四波』の回避に全力挙げよ」、毎日「3府県にまん延防止 『第四波』想定した戦略を」と、危機感あふれる見出しが並ぶが、惜しいことに中身がない。それもそのはず、「まんぼう」そのものの中身がない。

 いや、いままでも中身らしい中身はなかった。「まんぼう」と省略されるに至っては、せっかくの危機感演出がゆるキャラ的ネーミングになってしまって、コケオドシにもならないじゃないか。

 失礼ながら、この際は、政治家諸氏が感染拡大防止策について、「わたしらには抜くべき刀がございません」と率直に発言なさったらどうか。そこから人々が「やらせ自粛」ではなく、「本気自粛」を主体的・自発的に工夫なさるのではあるまいか。