論 考

大統領の再選が、国を危うくする

 トクヴィル(1805~1859)『アメリカの民主政治』に次のような記述がある。要旨を書く。

 陰謀と買収は選挙制政治の自然的弊害である。国家元首(大統領)が再選され得るとき、これらの弊害は際限なく広がり、国の存在までも危うくする。

 なぜなら、単なる(大統領でない)候補者が、陰謀や買収をやっても所詮は個人の力であるが、大統領が再選を目指す場合は、巨大な資力を持っている国家自身が陰謀や買収の主体となるのと等しい。

 大統領である候補者は、政治はどうでもよく、外交も法律も、とにかく再選に役立つかどうかになってしまう。彼が任命する公務員の地位も国民に対してではなく、自分に対してなされる奉仕への褒賞である。

 トクヴィルは、1831年から32年にかけてアメリカを訪問した。収集した知見をもとにして、同書を著した。まるで、トランプ登場を予測していたかのようだ。トランプ氏がトクヴィルの著作を読んで悪用したとは考えにくいから、トクヴィルの洞察は予言ができるほど科学的に深いことになる。