論 考

長期戦を覚悟すべし

 4月23日、コロナウイルス治療に消毒液を注射してはどうか、紫外線がよろしい――などと、記者会見でトランプ氏が暴走した。自殺したい人がよく使う方法だと、専門家は即刻反論。消毒液メーカーは急ぎ「治療目的で使わないで」と発表した。率直な感想を言わせてもらえば、トランプ氏が自身で実験してほしい。

 同日、1796年にE・ジェンナー(1749~1823)が、牛痘種痘法を発明したイギリスのオックスフォード大学で、ワクチン臨床実験が始められた。800人対象で3か月くらいかかるそうだ。その後、さらに5,000人を対象としておこなわれる。しかし、来年中に使用可能になる見込みは少ないという。

 24日には、各国首脳とWHOが、治療薬・検査・ワクチン開発を加速する協力体制を合意した。トランプ氏のところは背中を向けている。まあ、こちらはウイルス以前の問題だ。

 横倉義武医師会長は、ワクチン開発がなければ、五輪開催は難しいと語った。以前も書いたが、わたしは中止がベターだと思う。厄介な問題解決に臨む場合、作戦中枢は戦線を拡大してはだめだ。知恵も資材もお金も、集中して活用するのが正しい戦略配置である。