2017/01
報告・微力だけれど、無力じゃない!ライフビジョン学会





あまおうのカクテルを作る石橋さん


番号札を上げるビターの皆さん


年代ものワインに
ビターもバーテンダーも集中


12月12日、AMDAに入金しました。
32万500円、ありがとうございました。



ライフビジョン学会恒例
チャリティオークションパーティ21st

微力だけれど
 無力じゃない

ありがとう! 32万500円



 2016年12月10日(土)、東京新宿京王プラザホテルメインバー・ブリアンで開催したライフビジョン学会恒例のチャリティオークションは、おかげさまをもちまして首記の金額を、認定特定非営利活動法人AMDAにお送りすることができました。
 ライフビジョン学会ではこれまでに21回のオークションパーティの他、緊急カンパなどを含めて、延べ人数1194人の皆さんにより、延べ金額7,581,919円を、自然災害や戦争被害に遭われた皆さまにお贈りしました。


 毎年12月の第二土曜日は、ライフビジョン学会恒例のチャリティオークション・パーティ。場所は都心・京王プラザホテルのメインバー「ブリアン」。三々五々、おしゃれして集まる常連の皆さんも、普段出入りするお店よりちょっと高い敷居をまたいでヤアヤア、久しぶり。ここでカクテルグラスを片手に、ゆったりと歓談しながら、カンパ金集めのパーティをしようというこの趣向は、今年で21回目となった。

 それは1995年1月17日、阪神淡路大震災から始まった。たまたまライフビジョンの事務局が出張で宿泊していた十三のホテル、16階の客室では、テレビが床に投げ出され、トイレの水がポットから飛び出し、散乱したアメニティが水で使えなくなっていた。逃げ道を確保すべく開けたドアごと振り回されて、唇を切った。同行した隣室の先輩は、枕で頭をカバーしてベッドの隙間に小さくなっていた。土地勘もなく、タクシーを呼んでも来るあてもなく、止む無く動いている交通機関を乗り継いで、ほうほうの体で東京に逃げ帰った。
 神戸から送られてくる映像は、じっとしてはいられない、何かしなくては、何ができるのかとの焦燥感を突きあげた。それまでの地震とは衝撃の大きさが段違いだった。ライフビジョン学会は地震から25日目の2月11日、緊急行動『負けるもんか、元気出せパーティ』を呼びかけた。
 現役サラリーマンたちに声をかけて航空券、旅行券、ホテル宿泊券などの寄付を募った。パーティ会場には、自粛で閑古鳥が鳴いていたホテルのバンケットルームを割安で協力いただいた。関東を中心に96名が呼応し、現金や、オークション用のカンパ品など140点が集まった。駆けつけた人たちは,朝摘みイチゴや手作りの日用品、もらいものの高級ブランデー、海外旅行の民族小物などを携えていた。これが今につながる、「ライフビジョン学会チャリティーオークション」の原点であった。この時の参加者数人が、21回目の今年も中心メンバーとして運営を切り盛りしていた。
 チャリティーオークションから21日目の3月4日、会場に参加していた群馬県高崎市にあるNTT労組(現)が、高崎から長野善光寺まで120kmを踏破して復興祈願しようとして、ライフビジョン学会の運動を進展させた。参加費は全額カンパ、早期リタイアには罰金付きという触れ込みに、予定をはるかに超える178人が参集した。

 いくら善意のカンパ集めとはいえ、応援者がしめやかな気持ちだけでは元気が出ない。パーティは華やかに、カンパは面白く、飲んで笑って財布を緩めて、また次も参加しようという楽しさをどう演出するか。チャリティオークションパーティの世話役たちは、知恵と心を砕き続けた。

☆★☆
 会員A氏は一級建築士。阪神淡路のテレビ報道に、自分が職業としてきた構造設計の基本を疑うような光景に釘づけになっていた。建物が原因の死者が一時間ごとに百人単位で増えていく。何かしたい、何かしなくては、でも何ができるか。情報を集めて手を尽くし、会社にはボランティア出張を申し出て断られてようやく、代休を含む3日間の休暇を取って現地に赴いた。
 神戸に住む会員S氏は労働組合の委員長として、社員組合員の安否確認を進めていた。地震2日後の出勤率は20%。この日から二人一組で自転車・バイクで捜索隊を出し、全員の安全を確認した。災害時の出退勤、賃金カット、就業時間内の自宅復旧、成績査定への影響など、災害時の人事管理に心を砕いた。S氏はこの体験を、ライフビジョン学会の勉強会で報告した。

 BGMの中、会場バーカウンターではオープニング・カクテルの準備が進んでいた。本日は苺「あまおう」が主役。シェイカーを振るのはブリアンのバーテンダー石橋さん。三角のカクテルグラスの底に氷のカケラがキラキラ、グラスのふちには「あまおう」が飾られて、いかにもかわいい。これを競りにかける。
 それでは1500円ぐらいから始めますと進行役のT氏が言うが早く、会場から「はい、2千円」、続いて「3千円」、3,500円のコールはいま4人出ています。「4千円」。では4千円でOKの方、手を上げてください。1,2,…5人、はい。以上4千円で5杯!。
 気分は一気にオークション! オープニングカクテルはオークションのデモンストレーションにつながった。
 パーティ会場では歓談と飲食が始まった。この時間に、オークションに提供された品々を下見する。これらの品物の「価値」を見つけて、値段をつけて、その価値を競り合っていくのかオークションである。ライフビジョン学会に提供された品物は多種多様で、加えて価値を見極めるのが難しい商品が揃っていると、T氏が解説する。確かに、落花生、ウクレレ、リユーズの工芸品、衣類、ひな人形展示会入場券…、ここから自分なりの価値を見つけて落札予算を想定するのは、ちょっと難易度が高いかもしれない。
 提供品を囲んで、ぽつぽつ商談が始まる。
 「へーえ、いろんなものがいっぱいあるんですね。」
 「すゴーい、これは編まれたんですか。」
 「えぇ、うちの家内が沙織機という機械で、手織りです。まぁ素人の…ハハハ。」
 「私もちょっと、買いたいと狙っています。」
 「お願いします。」
 会場はさざめく笑い。背景にウクレレの調律の音がする。なぜか参加者の中にフォルクローレを趣味にする人がいて、なぜか音叉を持っていたのだ。
 当日持込みのカンパ品もある。何が来るか分からないのだが、スタッフはその場で番号荷札をつけて、種類を分別して商品台にレイアウトする。21回目のチームワークは滑らかに進む。
 いよいよ、オークション開始の時間になった。進行役T氏が、オークションのルールを紹介する。競り上げて、カンパ品の価値を上げていただくそのときに、受付で渡しているカードを掲げてほしい。このカードが上がっている間は競り上がりが続き、一枚だけになったら落札者が決まる。
 長年にわたって、このオークショナー(auctioneer)を引き受けてくれているO氏が登場する。
 「皆さんこんにちは。今日はいつもより参加者が少ないですが、トランプ景気をここに持ち込めるかと、私がこの役をやります!」 カンパ金額獲得に厳しい戦況が予想される中の決意表明に一同、拍手。
 ――それでは景気良く行きます、11番、半袖カシミア・クールネック・セーター袋入り。カシミアは分かりまね、どういうものか開けたら分かります、買った人が開けられます、買わなければ開けられません。(笑い)。2千円から。2千円! 2千円!
 オークショナーの呼び声に会場はノーアンサー、買い手がいない? 場内に軽い緊張が走る。「あの、だんだん吊り上げていくのがオークションなんですね」。答えて一人が「ハイ!」。すかさずオークショナー、「ハイじゃなくて何円って言ってよ。」(笑い)。
 誰かを応援すること、誰かに喜んでもらうことは誰でもうれしい。いやいやするのはカンパじゃない。家族の喜びをわが物とするように、カンパ金作りは大きな家族に向けた愛のメッセージ。そこに楽しさ、面白さがなきゃただの税金じゃないか。
 ――つぎいきます、ペーパーギフト3セット。日清紡の高級家庭紙セットをご自宅配送する。「3,000円」、3,000円出ました、とオークショナー。3,500円、4,000円、4,500円。「では」とオークショナーは、それまで手を上げていた3名を4,500円の最高値に統一して落着。このゲーム、戻り道の無いのがちょっとスリリング。
 ――つぎ、金額不明の商品券! 参加者に配られたカタログには「?,???円」とある。ん? 「私はいくらか知ってますよ、でも言いません。まず3,000円、無いですか、3,000円」とオークショナー。警戒心がひたひた広がる。えもいえぬ可笑しさが笑い声となって堰を切る。幸運を買うギャンブルにも似て、のるかそるか。「ケッ、5千円の商品券を3千円で売るのか」と裏を知る誰かが暴露する。結果は、暴露者が6千円で落札。
 ――35番、ドミニカのコーヒー豆4点。おいしいと思います、私はコーヒーよりお茶のほうが好きなんですが(笑い)。まずコーヒーが好きな人、ちょっと手を上げてください。
 会場から、「この豆はもう挽いてあるの?」「買ってから分かります。」会場から「千円」の声には、「すみません、私が先に言いますから。」(笑いと拍手)
 ――つぎ、ドミニカの葉巻2本セット。タバコ吸わない人も買えますよ。「はい、2千円」の声。
 あの、2千円で当然みたいな顔していますが、これ、オークションですよ。
 この辺から笑いに弾みがつく。2,500円、3千円。じゃあ消費税つけて3,240円。細かいねぇ。ここで事務局が「いやぁ、お釣りの用意が無いよ。」「じゃあ3,500円でいいですか」のオークショナーに支持の拍手が起こってしまえば、ビター(bidder)は四の五の言う間が無い。
 こんな調子であれこれいろいろ、先月号で紹介の品々に値がつけられ、競り合って笑い合って、カンパ金が積み上がっていく。
 このパーティの名物カンパ品の一つは、「野生の猪肉」。キレイに解体してスライスして、冷凍した1kgパック6口をご自宅配送してくれる。パーティの途中に「提供者から、今日は2頭仕留めたとの電話が入りました。」と、ライブ中継が入る。
 「新鮮な猪肉。お正月前に届きます。家族団らんで3千円。」はい、3千円で3口っ。提供個数より入手希望者が多い。4千円、5千円…。ここで挙手が留まる。なんとしても売り手市場に持ちこみたい。そこに「4千円に戻りませんか」のリクエストで再出発。じゃあ4千円が2つ、3つ、と人気復活し、5千円で6口完売。
 早速、提供者に報告の電話をする。「高値で売れました、ありがとうございました」。

 毎年たくさん提供いただくのが、お酒。日本酒洋酒、今年目を引いたのはカティサークのクラッシック・ボトル。ネット上では珍重されているらしい。「これは買っても呑まないようにお願いします。置いてるほうが価値が出るんです」とアドバイスの声が飛ぶ。
 そしていよいよ、この日一番の注目、「1975 VINTAGE PORT」。提供者は昔仕事でヨーロッパに行かれて購入、寝かせていたというお酒。「このお酒がどんなものであるか、ブリアン佐藤さんにお話を伺います。」と促すと、会場から期待の拍手が起こった。
 ―― 普通の赤ワイン白ワインはフランスとかイタリアですが、ポルトガルも世界を代表するようなワインを作りたいとして作られたのがポートワインです。中でもビンテージと表示されているのは、ブドウの出来が良い年でないと作られないお酒で、作られない年もあるんです。味はシェリーのような、酒精強化ワインといわれるのですが、少し甘みを残した状態で製品化されたワインで、食後などにおいしく飲めるワインだと思います。
 40年ものというのは私も初めてで、とても楽しみです。――
 ここで佐藤さんにテイストをお願いする。そばにいる進行役にまで、濃くて深い甘みが香ってくる。
 ―― すごい甘い香りがしますね。あの、甘みが凝縮されて、これ以上熟成すると酸化してしまうかという究極のところ、ぎりぎりのところで、なかなか飲めないですね。――
 ―― これぐらいのワインだと、コチラの格式のホテルではいくらぐらいの値をお付けになりますか?
 ―― たぶんオークションでも、2万円ぐらいつけると思います。そうなると、コチラのホテルでは、ボトルでウン万円とかになりますね。(ため息交じりのホゥ、の声)
 これは保存が良かったんですね、味はぜんぜん問題はありません。おいしいです。ぜひ飲んでください。――
 グラス一杯2千円で行こうかと声がかかると、この先もう出会うことのないであろうこのお酒に、たちまち10杯落札決定、カラ瓶は1975年生まれという女性が記念に持ち帰った。
 こうして予定通り、華やかに面白く、飲んで笑って財布を緩めて3時間が過ぎた。
 最後にライフビジョン代表奥井禮喜が、いかにしてデモクラシーの民として生きるか。微力の重さを受け止めながら来年につなぎたいと御礼の挨拶をして散会した。
 皆さま応援、ありがとうございました。
(文責編集部)







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