2007/05
学歴逆詐称青山麻美


 学歴詐称と言えば、最近どこかの国会議員が実際には「遊学」に過ぎなかった海外留学を、卒業と偽って選挙名簿に登録していたという話がありました。今回の学歴詐称はその逆で、実際には大学を卒業していたのにも関わらず、「高校卒」と偽り、地方自治体に採用されていたという話です。
 例えば、大阪市では、職員約45,000人のうち400人以上が、学歴が大卒や短大卒なのに、受験資格が高卒以下に限定されている職種で採用されていたそうです。自治体職員の就職時の虚偽申告は昨年6月以降、神戸市(36人)や兵庫県尼崎市(2人)で発覚したことを受け、大阪市でも調査を開始したところ、このような事例が続々と確認されたようです。因みに神戸市や尼崎市では諭旨免職としたそうですが、大阪市は、こうした職員が業務を支障なくこなしているうえ、「これだけで安定した生活を奪うのは厳しすぎる」として停職1か月の懲戒処分にとどめたという話です。
 この1〜2年は企業業績の回復を受け、新卒者の採用もかなり好転したようですが、バブル崩壊後の就職難を考えればこの程度の虚偽申告は驚くに価しない気もします。先週大統領選が行なわれたフランスなど欧州大陸でも、若者の失業は最も深刻な政治問題です。半分冗談かもしれませんが、フランス人の友人曰く、「マクドナルドのアルバイトも競争が厳しい」という現実だそうで、若年層の就職難は日本以上のようです。
 言うまでもなく、若年時に就職できないことは一生のハンデイです。現在のように景気が回復しても、不況の真っ最中に卒業した30歳代の中には、まともなキャリア形成が行なわれなかったため景気回復後もその恩恵に預れない人が少なくないという話を聞きます。そもそも、この「高校卒」という学歴制限、ある時期の日本では、対象者も多く有効な基準だった訳ですが、多くの人が大学に行くようになった昨今は、どんな意味を持つのか疑問があります(大阪市では2002年にこの制限は撤廃されたそうです)。
 また、高卒採用枠に22歳以上の人が応募してくる訳ですから、採用する側もある程度事情を察した上での受け入れと思えます。ましてや地方自治体の採用であれば、どこの誰かある程度分かった上で面接しているとも言えるのではないでしょうか。このような事例に厳しく対処した神戸市や尼崎市が正しいのか、あるいは情状酌量した大阪市が正しいと言えるのか、悩ましいニュースでした。


筆者プロフィール
青山麻美
国内外の政治・経済に詳しい社会人大学生。


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