-組合の思想と存在感 ユニオン・ムーブメント立ち読み

ライフビジョン自社印刷
1,000円
A6版/208頁
<目次>
第一章 進化のためになにをするか
第二章 活動の歴史から学ぼう
第三章 人事ロマンが消えた
第四章 繰り返す人為的淘汰
第五章 ユニオン・ムーブメントの思想
第六章 日本の民主主義を考える
第七章 日本的文化なるもの
第八章 勤め人に文化的提案を
第九章 活用されぬ時間資源
第十章 勤め人の粋な生き方
第十一章 存在感のある組合活動

 あとがき
 組合の低迷が著しい。存在理由がなければ消えればいいという厳しい意見もあるが、私は組合の存在理由はますます高まっていると確信している。私の持論は「組織の元気は個人の元気」…である。もちろん組織運営のまずさもあるが、組合が元気がない本質は組合員たる勤め人の元気がないことなのだ。勤め人が自分の人生を充実させたいと思えば、自分らしく、粋に生きなければならない。それが個性的ということであり、手応えのある日々を過ごしていれば当然元気を感じるはずである。元気であれば個性は必然的に連帯するから、組合も元気になる。しかし昨今、本当に心配なのは個性的で元気な勤め人に滅多にお目にかからないのである。わが勤め人諸君は健気に真面目である。羽目を外すような人はまずいない。その真面目さの向こうに、私には孤立の影が見えて仕方がないのである。
 この本は「組合の思想と存在感」について述べたものである。しかし、組合活動 家向けだけに書いたのではない。勤め人諸君に自分の生き方を考えていただき、さ らに社会的存在としての個人と組織の関係について考える材料にしてもらいたいと 願っている。私たちは日々の生業にかまけて、いつも少なからず大事な問題を積み 残してきた。たとえば二十年ほど前には人間疎外がおおいに話題になったが積み残 してしまった。モノから心へとか、豊かな生き方についても、すでに高度経済成長 当時、あまりの経済至上主義の反省として登場していたのだが、きちんと思想とし ての血肉にせぬままに通り過ぎたのだ。幸か不幸か、経済的繁栄の谷間に埋没して きた日本的光景がいつも頭を去らないのである。とりわけ危惧されるのは昨今、じ っくりと語り合うという風潮がないことだ。経済的に生きることは大事ではあるが、 もう少し、お金にならぬことに灰色の脳細胞を活躍させてはいかがだろうか。本気 で考えれば、他者との熱いネットワーク(連帯)がほしくなるのは当然なのだから。
(一九九七年十月 奥井禮喜)

 この本に掲載した小文は、組合の活性化を求めて一所懸命に活動している現役の 組合役員の仲間たちとの勉強会(一九九六年十一月から九七年十月)に毎月提供し ていたものを再編集して出版しました。