NO.1678
高市氏が悲願とする食料消費税減税案が発表された。最大の問題は長年にわたり、年金・医療・介護・子育て支援の財源となってきた消費税をいとも簡単に切って捨てる軽率な判断力である。眠る間も惜しんではたらく結果だとすれば起きて寝言をしゃべっているようなものだ。正常な判断力なき政治家は排除するしかない。
リーダーシップは、統率力であり、指揮し、指導する力である。他人の意見や世評を顧みず、自分の思うままに振舞うのは、いまどき流行らない。企業であれば収益を上げさえすれば社長として恰好がつくケースもあるが、ワンマン社長は失敗するのがオチである。高市氏は典型的なワンマン首相である。首相は日本全体に気配り、目配りしなければならない。狭い日本といっても1億人以上の人と生活がある。自分の好みで重要な決断をしてはならない。
指揮する力というのは、いかに国民全体の総意を得るか。独善的偏向や判断ミスを犯さないために政府・党、国会の英知を集めねばならない。この当然の作業を軽視するのは、国民を割ることになっても果断に実行するという思い込みである。すでに考える前提から大きく偏向している。出発点を誤れば当然迷走する。批判を抑えようとして指揮力を揮えば表面は収まったようでも、不満の歪みが溜まる。いまの自民党が正常なら! 不満が蓄積しつつある。
高市氏の思い込みの強さは常軌を逸する。「決断と前進」内閣を標榜すれば、何がなんでも決断するという態度である。睡眠を縮めて考えている時間は、自分の言った言葉に無意識であっても支配されている可能性が高い。決断するには十分すぎるほど思索を重ねなければならない。千慮の一失は、知者も千慮に一失があるという戒めである。自分のコピーに支配されては千慮ならぬ浅慮である。
消費税減税は、年金・医療・介護・子育て支援など社会保障制度を支える柱である。しかし、財源は依然として語られない。ひょっとして人々が歓迎するかもしれないが、それは長い歴史の短い瞬間であって、早晩、このむちゃくちゃな政策の反動が出る。政治家の備えねばならない重要な資質は、現在を過去と未来の橋渡しの時期として考えねばならない。かつて、すべてにわたって軍事力優先した時代、国民の生活は塗炭の苦しみに放り込まれた。食品消費税1%の未来は戦時中並みになってもおかしくない。
いまの物価高は円安抜きには考えられない。にもかかわらず輸出は伸びない。物価高がさらに円安を招く。積極財政を変えないと円安は変えられない。370兆円の官民投資・補正予算・食料消費税減税が歳出増で財政赤字が拡大する。インフレが実質金利を低下させ、さらに円安につながる。大きな需要を刺激すれば輸入が拡大し、円売りになる。輸入物価価格上昇が物価を押し上げる。
安倍内閣からのデフレ対策と銘打った10年に及ぶ財政ファイナンスで膨大な通貨を供給し続けた。超円安になっても輸出は拡大しない。高市氏は、財政赤字になんら問題を感じず、官民の巨大な投資で産業が勢いづくと思い込んでいる。日本企業の「底力」を信じて疑わないと繰り返すが、30年以上にわたって不振を続ける事実をまるで認識していない。1970年代までの高度経済成長の夢を見ているだけだ。多数派の中小企業は、原材料高と人手不足で苦しんでいる。
打つ手は、日銀による金利引き上げと、国内生産の付加価値を生み出すことだ。積極財政は基本的に誤りである。
景気がよいことが政権維持の原則だというのが、自民党歴代政権の考え方だが、株高だけで景気がよいと考えるのは大間違いだ。財政拡大はまさに火に油を注ぐ。高市氏に国のかじ取りができるだけの見識、才量はない。しかも他人の意見は聞かない。これでは首相という重責が担えるわけがない。退場すべし。
