筆者 奥井禮喜(おくい・れいき)
トランプとプーチンが電話会談した。
BBCは、モスクワ駐在員の解説を掲げた。その見出しは、「トランプがプーチンの国際社会復帰を呼びかけた」というものだ。なるほど。
2022年2月、ウクライナ侵略を開始して以来、プーチンは世界の嫌われ者で、国連総会では侵略を止めるように決議をされ、ICC(国際刑事裁判所)からは逮捕状を発行されて、お尋ね者だ。クレムリンで豪華な立場にあるとしても、並のハイソサエティではない。いわばマフィアのボスと同じだ。
だから、トランプがウクライナ問題をめぐって直接電話してきたのは、国際社会復帰の呼びかけになるという次第だ。
内容は、まだわからない。近々、サウジアラビアあたりで、トランプ・プーチン会談がもたれるのではないかという情報(トランプが示唆した)もある。
電話の少し前、米国防長官へグセスが、――アメリカは、ウクライナ問題について同盟国との不均衡な関係を、これ以上容認しない。NATO各国は防衛費を大幅に増加させよ。——戦争解決に、ウクライナが、領土を2014年以前の国境に戻せというのは非現実的だ。ウクライナのNATO加盟の可能性は小さい。(要旨)――と語った。
欧州各国にすれば、トランプ政権の態度をおおかた予想はしていたが、この露骨な見解がポコッと出されると頭にくる。
英独仏などと欧州委員会は、――ウクライナをめぐる今後のいかなる交渉にも参加する必要がある。ウクライナの安全保障を確保した公正な合意のみが、永続的な平和を保証する。――と決意を発表した。
へグセス発言直後に、トランプ・プーチン電話会談の報が入った。各国は、これを知らされてなかったので、強い衝撃が走った。
しかも、へグセス発言と合わせれば、プーチンは大喜びするだろう。なにしろ、国境は元に戻さず、ウクライナのNATO加盟もアウトだから、満額回答みたいなものだ。もし、これがトランプの和平カードであれば、米ロ以外は簡単には承服できないだろう。
ゼレンスキーは、つねづね「ウクライナ抜きのウクライナに関する協議はできない」と主張してきたが、トランプ・プーチンの電話協議はウクライナ抜きでおこなわれた。「アメリカ抜きの安全保障は、真の安全保障とは言えない」とも語ってきたが、アメリカの保証がこの程度であることを期待したわけでもない。
トランプ・プーチン電話会談では、和平交渉を即座に開始することで合意したそうだが、トランプはすでに手持ちのカードを見せたみたいで、電撃的というよりも、超拙速の和平交渉になりそうな予感がする。