週刊RO通信

G20、バリの首脳宣言を読む

NO.1486

 11月16日、インドネシアのバリ島におけるG20サミットの首脳宣言が採択されて閉幕した。

 加盟国・地域は、G7、EU、ロシア、新興11か国によって構成されている。金融サミットとも呼ばれる。財務相・中央銀行総裁会議と首脳会合があり、議長は持ち回り(事務局機能を果たす)である。今回はインドネシアであった。G7が西側のみであるから、G20のほうが世界事情を反映している。ついでながら加盟国・地域の世界におけるGDPは90%、貿易額は80%、人口は2/3を占めている。

 たまたまポーランドでミサイル着弾、2人死亡の事故(であろう)があった。新聞は、ロシアのミサイルがNATO加盟国のポーランドに打ち込まれた。NATOは参戦するか否かと言わんばかりのトーンで、G20首脳会合の扱いは丁寧さを欠いた。わが新聞は、政治面から国際面まで、いわゆる事件記事化の傾向が出ているといえば思い過ごしだろうか。

 首脳宣言を外務省の仮訳で読む。G20は、「ウクライナにおける戦争が世界経済に更なる悪影響を与えていることを目の当たりにし、この問題について議論がおこなわれた。まず、3月2日の国連総会決議で、ロシアのウクライナ侵略を最も強い言葉で遺憾とし、ロシアのウクライナ領土からの完全かつ無条件での撤退を要求している」ことから記す。

 「ほとんどのG20メンバーは、ウクライナにおける戦争を強く非難し、この戦争が計り知れない人的被害をもたらし、成長の抑制、インフレの増大、サプライチェーンの混乱、エネルギーおよび食料不安の増大、金融安定性に対するリスクの上昇といった世界経済における秩序の脆弱性を悪化させている。」続いて「この状況および制裁について、他の見解および異なる評価があった」というのはロシアの見解を示すだろう。

 「平和と安定を守る国際法と多国間システムを堅持することが不可欠である。これには、国際連合憲章に謳われているすべての目的および原則を擁護し、武力紛争における市民およびインフラの保護を含む国際人道法を遵守することが含まれる。核兵器の使用またはその威嚇は許されない。紛争の平和的解決、危機に対処する取り組み、外交・対話がきわめて重要である。こんにちの時代は戦争の時代であってはならない。」

 これが直接的にウクライナ戦争の終結をもたらすものではないが、先に、中国の習氏・インドのモディ氏がプーチンと会談した際の両者の見解とほぼ同じ内容での文言がまとめられた。中国もインドもG20では目立って報道されていないが、やはり、両国のロシアに対する態度が、重しとして効果を発揮していると見るべきであろう。

 ロシアのウクライナ侵略開始以来、アメリカやNATOは、一貫して中国をロシアと一蓮托生扱いしてきたが、それがウクライナ戦争解決に対する正しい見識ではなかったことが、傍証された。なにしろ中国・インドに見限られたら、ロシアは孤立無援に陥るしかない。それは困る。いまも、中国・インドの言動・動向に神経を使っているはずである。

 実際、ロシアの反対で首脳宣言がまとめられるかどうか危ぶまれていた。形はどうであれ、ウクライナに武器供与しているアメリカとNATOはウクライナ戦争の当事国である。停戦への熱意が感じられないなかで、中国とロシアがロシアを抑える力を見せたと言えるのではなかろうか。

 さて、バイデン氏も中間選挙を上出来で乗り切ったことでもある。もう、そろそろ停戦への段取りに本腰を入れるべきだ。そうでなければ、きれいごとを並べるが、アメリカは国際平和を語っているのではなく、自国的平和、すなわちアメリカ・ファーストこそが本音だという批判を避けられない。

 従来G20は、世界の経済格差、低所得国の債務問題、環境問題に突っ込みが弱いとの批判があった。今回は、かなり高いレベルでウクライナ戦争への見識を取りまとめたと見るべきであろう。相対的にG7の存在感が、また一歩薄くなった感もある。

 インドネシア大統領ジョコ氏が、首脳宣言をまとめ上げた努力を評価すると同時に、世界的合意がどのあたりにあるかを示したセンスに共感する。