論 考

精神の堕落

 ウクライナ戦争の報道は、内外ともに戦争自体の戦略戦術に関する内容ばかりで、国際外交の動きがまったく見えない。

 いわば、国際外交に大きな空洞が開いたわけだ。

 対ロシア経済制裁の効果は、皮算用通りには進んでいない。逆に、エネルギー・食料など制裁を課した国々の経済が混乱している。

 制裁を課していない国はざっと100か国、GDPで世界の40%を占める。

 本問題の本来の意味での戦略はなにか。戦争を止めさせることだ。戦争を止めさせるために制裁を駆使したが、戦争範囲は拡大し、世界経済がカオス状態になっただけではなく、世界秩序もまたカオスである。

 世界をさらに分割するような仲間作りばかりが進む。西側なるグループが圧倒的力を誇示していた時代ならいざ知らず、このままでは、世界は共倒れ一直線である。

 今後、各国の国内政治はさらに不安定さを増す。自国の足許がおぼつかない各国リーダーが、思い切った解決策を提起できるわけがない。

 時間を止められない。大きな戦略を提起して方向転換するしかない。そのような考えにまったく思い及ばないのは、まさに精神の堕落だ。