論 考

シラーの心意気

 きのう、東日本震災復興支援「真夏の第九」主催による『真夏の第九』公演を聞きに行った。ベートーヴェンの交響曲第九番合唱付きを演奏する。今回で第9回目である。

 シラー(1759~1805)の詩『歓喜に寄す』(1792)に感動したベートーヴェン(1770~1827)が作曲に着手したのは1815年で、完成したのは1824年、作曲家最後の交響曲となった。

 シラーの詩のポイントは、すべての人々は兄弟になる。心を分かち合う魂に触れ合う歓喜を表現した。さっこんの内外のおぞましい事情を思えば、切々と心にしみわたるものがある。

 シラーもベートーヴェンもカント(1724~1804)を研究し、おおいに思索を発展させた。ドイツ哲学の大興隆時代の人々である。

 人間が社会を構築したのは大変な事業であった。いつの時代にも、その偉大さを忘れてはならない。人品高潔ならざる連中が国家主義や民族主義をかざして暴走するとき世界は混乱する。

 歓喜に至ろうと努力する人々が増えるとき、確信を抱いて自分の道を進むとき、世界から戦争を消すことができる。

 ふだんから飽くことなく聞き続けている第九であるが、『真夏の第九』に、また格別のすがすがしさを感じた。

 シラー最後の言葉は、Immar heitrer, immar besser(ますます快活に、ますますよりよく)であったそうだ。