論 考

司令塔不在、漂うコロナ対策

 菅氏はとにもかくにもワクチン頼み。中身のない記者会見でこれだけははっきりした。また、尾身氏が語る感染拡大リバウンドの危機意識が、菅氏にはまったく見られない。見事なほどの違いである。

 菅氏には、もう少し演技の仕方もあろうに、まあ、案外正直? というべきか、本音を隠そうとする意志が恒常的に働いていても、他者が注意して観察すれば本音はわかる。

 たとえば、ワクチン接種の数字を大きく表現する。さかんに100万回/日を振り回すが、実際は88万回程度である。人々の生命の問題だという意識が強ければ、緩い数字ではなく、厳しい数字を扱って、引き締めようとする。ところが、安心安全を言いたくて仕方がない。相変わらず危機意識がない。

 昨年末からワクチン接種に励んで1回接種が60%に達したイギリスでも、50%に達したアメリカでも、このところ感染拡大傾向にある。理由は単純だ。接種事態が安心感につながり、警戒心が緩んだ。

 もともとわが国の感染拡大防止対策なるものは、見えざるコロナに対して、人々が警戒心を持ったことが最大の効果を上げたのであって、外国から購入したワクチンを除けば、行政の積極的対策は何もない。

 この最も大事なことが菅氏らの頭には入っていないらしい。ここへきて、専門家や医療関係者の危機感が強く感じられるのは、コロナ対策の司令塔が依然として機能していないことを示している。