論 考

国際金融犯罪と政治

 フィンセン(FinCEN 米財務省金融犯罪取締ネットワーク)捜査資料を、ICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)が入手し、フィンセン資料の中のSAR(不審行動報告書)の一部を分析した結果、2000年から17年に2兆ドル(212兆円)規模の資金洗浄疑惑が浮かび上がった。

 金融機関は、顧客の本人確認をして犯罪者などではないかを調べ、怪しい場合はSARを提出すると同時に、汚れた資金を受け入れてはならない。しかし、銀行が資金洗浄に加担していることを示している。

 なぜ金融機関が、顧客と資金が怪しいと知りつつシャットアウトしなかったのかという疑問が沸くが、金融機関はどんなおカネでもおカネとして取り扱いたいのだろう。なにしろ素人だから直ぐにそう考える。

 ICIJの膨大な分析作業によって2016年には「パナマ文書」、17年には「パラダイス文書」が暴露され、法律事務所が、政治家・資産家らの資金をタックスヘイブン(租税回避地)へ送ったり、脱税指南や、資金の秘密運用をしていることが報道された。

 今回は金融機関の暗部がバレたわけだ。これも資本主義ウィルスのなせるわざかと考えながら、あれやこれや記事を拾って読んでいると、英国保守党にロシア大富豪と縁のある、英国市民権を有するロシア人女性が、2012年から英国保守党に170万ポンド(2.3億円)献金した話にぶつかった。

 これも含めて、英国では昨年12月の総選挙前に、EU離脱問題や選挙へのロシアの介入が指摘されていて、11月に、ISC(議会情報安全保障委員会)調査報告書が出されたのだが、政府は公表しない。その内容の核心は、やはりロシアから政界への資金流入に関することだろう。

 ロシアの資金が、まず金融界に入り、そこを足場として政界へ浸透していくというのがミステリーの筋書きになる。英国は諜報活動では第一級かと思っていたが、脇が甘くなっているという批判は英国内ではかなり強いらしい。